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週刊 IT ニュース&コラム 2002/05/27
NTTドコモ、504iシリーズを発売開始、決済機能を強化

2002年 5月24日、NTTドコモは、携帯電話のムーバ504iシリーズを 発売した。初日から発売されるのは、F(富士通)とD(三菱)のみ。 N(NEC), P(松下), SO(ソニー)は、近日発売となっている。

504iシリーズは、28.8kbpsのパケット通信によりデータ通信が 3倍高速になり、iアプリの容量も約3倍増えた。新しい機能 として、赤外線通信(IrDA)も搭載された。

アプリケーションの実行環境は、初代ファミコン並の性能を 持つようになった。また、3D描画エンジンも搭載され、 操作性はともかく、遊べるゲームが増えるのは間違いないだろう。

赤外線通信は、PDAで標準的に搭載されており、自分の 電話番号やブックマークなどを送ることができる。これは、 あまり新しいものではないと思われるかもしれない。しかし、 決済機能を持った iモードや iアプリと連携することで、 キャッシュカードの代わりにもなっていくという。

携帯電話で自動販売機のジュースが買えるようになり、お金を 持たなくてもすむ時代が来るとアピールがされている。しかし、 大手の会社との提携であれば大丈夫かも知れないが、万能の 小額決済では手数料の問題があり、成功しないと思われる。 実際、1円単位のインターネット電子マネーはどれも失敗して いる。携帯電話が電子マネーになるには、NTTドコモがどこまで 提携範囲を広げるかにかかっている。

レンタルビデオを借りられるサービスも始まるといわれており、 身分証明の代わりになることも考えられると言われているが、 これもNTTドコモがどこまで提携するかにかかっている。 カラオケの曲の入力にも使えるサービスも始めるという。

機能の競争をやめ、サービスを重視する方向に変わってきたのは、 iモードの成功や XBOXの不調を見ると、間違っていないだろう。 しかし、結局、会員カードやキャッシュカードの代わりでしかない。 カードが使えないようにするわけにはいかないので、小売店に とっては、余計にNTTドコモなどに手数料を払うことになるので、 規模の小さい店ではあまり採用されないだろう。

カード会社的なビジネスにおいて、新参者であるNTTドコモが 成功するには、まだ時間がかかりそうだ。

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週刊 IT ニュース&コラム 2002/05/20
ファイナルファンタジー11発売、PS2で初のネットRPG

2002年 5月16日、PlayStation2 では初となるネットワーク・ ロールプレイング・ゲーム「Final Fantasy XI」が発売された。 ソフトの価格は 7800円だが、PlayStation BB Unit(これまで 発売されていたハードディスクユニットと同じ) を月1000円で レンタルするか 18000円で購入する必要があり、FFXI(Final Fintasy 11)のサーバの利用料金が月に1280円かかる。 キャラクターを1人追加するたびに月に100円かかる。 ADSL 環境(月約3000円)も必要だが、アナログでも ITMUX に 対応した TA があれば可能。キーボードとマウスは、パソコンの USBのものが流用可能。PS2専用のものとして、DUAL SHOCK に 対応したキーボードもある。

FFXIは、ネットワーク上に作られた仮想的な世界に多くの人が 参加して、協力して話を進めていくゲームだ。このため、FFX (Final Fantasy 10)のようにあらかじめ設定された個性的な キャラクターになることはなく、種族や職業など自分で作成する ことになる。キャラクターが見えないので初めは感情移入が しにくいかもしれないが、キャラクターが自分と異なる性格で 話すことがないので、進めていくうちにより深い感情移入が できるだろう。

ネットワーク・ゲームは、匿名の人間とのコミュニケーションが できる点が、これまでのゲームと異なる。自分の言葉で他の人に 話しかけることができる。これが、素晴らしいことか面倒なことか、 どう捕らえるかどうかによって、ゲームの好き嫌いが出てくる。 相手の出方を伺ってから行動を起こすタイプの多い日本人には、 気軽にプレイというわけにはいかないかもしれないが、そこは 匿名性のある世界なので、深刻に考えることも無いだろう。 知り合いと一緒にゲームを進めていく楽しみ方もあるだろう。 ただ、コミュニケーションを取るにはキーボードが必須なので、 これが障壁となっている人もいるかもしれない。 知り合いとゲームするときは、同じ部屋に集まれば、別に キーボードでコミュニケーションする必要がないのだが、 複数のコントローラや、1つの ADSL回線で複数のPS2を接続する ことは対応していないと思われる。

初のPS2のネットワークRPG(ロールプレイング・ゲーム)なので、 バーチャルな世界でコミュニケーションも取れずに迷うひとも 出てくるだろう。そんな人には、バーチャルな世界に参加して いるゲームマスターが手助けしてくれるという。

FFXIは、ゲーム店の前で行列ができるほどの熱狂はなかった。 これまでパソコンで発売されてきたネットワーク・ロールプレイング・ ゲームは、まだマイナーなものであり、それとの差別化があまり されていないのが要因だろう。BB Unit が、あまり用意されていない のも1つの要因だという。

その割には、発売後4日たっても毎日2時間ぐらいサーバのメンテナンス 停止が発生している。ドリームキャストのファンタシースター・ オンラインでも同じことが発生したが、その教訓が生かされなかった。 ネットワーク・ゲーム機と言っている XBOX では、パソコンでの経験が あるかもしれないが、同じようなことが起きるだろう。

後日、パソコン版の FFXI が発売されるという。充実した ネットワーク環境や CPUパワーを使えるメリットがあるため、 そちらを待つという手もある。

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週刊 IT ニュース&コラム 2002/05/13
ロボット工学の研究にAIBOを。OPEN-Rアーキテクチャを発表

2002年 5月7日、ソニーのエンターテイメント用ロボットに 共通したアーキテクチャ「OPEN-R」を発表した。 開発キット 「OPEN-R SDK」は、6月3日午前10時から非営利に限り無償で ダウンロードできるようになる。 今回対応するロボットは、 ERS-210, ERS-220のみ。

OPEN-R アーキテクチャは、犬のAIBO、熊のAIBO、人型ロボット (グランドランナー)といった、さまざまなロボットに共通する ものであるが、今回提供されるのは、OPEN-R system layer と 呼ばれる、ロボットを構成する頭や足などをモジュール化、 オブジェクト化したものを操作するための API だけである。 つまり、AIBOを走らせたり、思い通りに操作するには、 ある程度の経験と規模が要求されることになる。

ちなみに、思い通りに操作ができる OPEN-R application layer は、AIBOware と呼ばれるものがすでに有償で提供されており、 R-CODE というスクリプト言語やグラフィカルな操作環境によって、 プログラミングしやすいものになっている。

開発は、GNUによって無償提供されている gcc を使って C++ 言語をコンパイル、プログラミング専用のメモリスティックで ロード、無線LANでリアルタイムにデバッグ、という手順で行う。 開発環境のOSは、Windows 2000/XP または Linux であるが、 UNIXについての知識が要求される。AIBO のCPU は、192MHz のMIPS系MPUを使い、OSは、ソニー独自のリアルタイムOSである Aperios を使っている。マルチタスクであるが、ユーザが 使えるタスクがマルチスレッドでないため、Windows3.1で 処理をCPUに返すように、オブジェクトを協調させるプログラ ミングが要求される。

OPEN-R SDK の公開目的は、ロボット工学の研究開発や発展を 目的としている。モジュールの接続状況の取得、ロボットの 関節の微妙な操作、カメラや加速度センサー情報の取得、 音の発生や取得、温度センサーの情報の取得など、細かい 情報を取得したり操作したりすることができる。その一方で、 関節の限界速度を考慮しないと、破損の恐れもあるという。 周りのものに対して物理的に危険な動きをしてしまう不良 AIBOを作ってしまうこともある。

人工知能の研究にも使えるだろう。WAV音を発生することが できるので、ある程度しゃべらせることもできるからだ。 メモリが32MBと限られているが、無線LAN通信でホストと 通信できるため、ホストがサーバー処理を行うことができる。 人工知能は、最近目立った成果が見られなくなったが、 その原因は、言葉だけでコミュニケーションをとっている からと考えられている。つまり、体からくる様々な情報や 過去の経験を踏まえて、初めて知能的な発想が出てくると 最近では考えられている。

気軽にロボットを操作できる AIBOware がいろいろ用意されて いるが、低レベルの OPEN-R API までも公開することで、 ソニーは、ロボットがエンターテイメントだけのものでなく、 教育や研究させて、産業として発展していくことを、本気で 考えていると伺うことができる。

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週刊 IT ニュース&コラム 2002/05/07
オフィス・アプリケーションが無償で手に入る OpenOffice.org

2002年 5月 1日、サン・マイクロシステムズは、これまで無償で 配布してきたオフィス・アプリケーション「Star Office」が、 バージョン 6.0 になって有償となり、それに伴い、無償かつ オープンソースである「OpenOffice.org」の配布を始めた。

OpenOffice.org は、Star Office 6.0 と同等の機能を持っているため、 ヘビーユーザでなければ、ワープロ、表計算、プレゼンテーションの ソフトが、実質無料で手に入れることができる。

単に無料になっただけではインパクトは無いが、マイクロソフト・ オフィスのファイルを扱えるようになっているところが大きい。 エクセルのピボットテーブルも使えるため、ある程度の互換性もある。 日本語やその他の言語にも対応、Windows版、Linux版などがある。

これまで、元のファイルがワード形式であるため、仕事で少し記入 するだけでも、高額で膨大な機能を持ったマイクロソフト・オフィスを インストールしていた人も多いだろう。 費用と効果が合っていないと 感じている人も多く、それで、オフィスの違法コピーが蔓延している のだろう。(いや、違法コピーは、安価な方が気楽なのかもしれないが)

しかし、これからは、OpenOffice.org で堂々とタダでオフィス・ アプリケーションを使うことができるようになった。

もちろん、異なるアプリケーションなので、操作体系やマイナーな 機能は異なる。エクセルのマクロなどをバリバリに使っている人は、 移行が難しいだろう。また、データベース・アプリケーションがない (Star Office にはある)ため、エンタープライズ向けには、 無償とはいかない。 しかし、多くの人にとって、OpenOffice.org は十分な機能を持って いるだろう。

以前、マイクロソフトは、ある製品を無償にしたことで、市場を 破壊した経験がある。それは、ブラウザだ。Internet Explorer が無償で高機能であるため、Netscape は市場を失った。 ついに、オフィス・アプリケーションにも市場崩壊の危機が 訪れようとしているのかも知れない。

ただ、フリーのオフィス・アプリケーションのシェアが拡大しすぎる ことは、有償版も提供しているサン・マイクロシステムズにとって、 喜ばしいことではないだろう。コンシューマは捨てても、ビジネスには シェア拡大する戦略をとるだろう。

なお、OpenOffice.org は、下記のリンクからダウンロードできる。 (筆者が行ったときは、サーバーがダウンしていたが)。 一部の雑誌では、β版がすでに付録になっており、そのうち正式版が 付録になるだろう。

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