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リンク・エボリューション、赤外線を使った決済ソリューション発表

 リンク・エボリューションは、5月16日に都内で金融決済用の赤外線通信規格「IrFM(Infra-red Financial Messaging)」に関するセミナーを開催。同社の代表取締役社長・北角権太郎氏より、IrFMの説明をはじめ、IrFMによる電子決済のデモやそれを実現する自社のソリューション製品などが紹介された。また、実際に導入が開始されている海外の事例もデモを交えて紹介された。


リンク・エボリューション 代表取締役社長の北角権太郎氏

 同社はこの4月に、近日発売予定のNTTドコモの504iシリーズにも搭載されるモバイル端末向けの赤外線通信規格「IrMC(Infra-red Mobile Communication)」に関するセミナーを開催したが、今回のセミナーは「IrFM」に焦点を宛てたもの。IrFMは、赤外線を使った決済を可能にするための標準規格で、今年1月にVISAインターナショナルを中心にIrDA(赤外線通信標準化団体)で制定された。

 同社はIrFMの標準化作業に技術サポートとして参加しており、その他の参加企業としては、PDAメーカーではPalm、コンパック、認証装置メーカーでは韓国Harex InfoTech社、東芝テックなどが挙がっている。また、電話関連ではNTTやNTTドコモも参加しており、電子決済技術では米国の金融関連のデジタル技術を研究開発するコンソーシアム「FSTC(Financial Services Technology Consortium)」もこれをサポートしている。IrFMは2002年を皮切りに実証試験が開始され、2003〜2004年の実用化が見込まれている。




■ IrFMによる決済は操作の簡素化が重要

 北角氏はまず、電子決済における2つの潮流を解説。現在電子決済では、インターネット通販などの電子化された仮想店舗による「バーチャル系」と、実際の既存店舗における決済部分のみを電子化した「リアル系」の2潮流が存在し、前者においては利益ベースに乗れる企業はまだ少ない傾向にあるが、後者は既存の決済方式の延長線上に位置するため、ユーザー層や業態に適した様々な方法が選択できるのがメリットだという。

 今回のセミナーのテーマであるIrFMは、後者のリアル系電子決済と赤外線通信を融合するもの。具体的には、SIM/UIMカードにクレジットカードやデビットカードなどの各種カード情報を実装したIrFM対応の専用デバイスと、IrFM対応の各種店頭端末(POS/CAT/DEBIT端末)間で、赤外線通信によりキャッシュレスで決済を実現する。IrFMでは、1つの専用デバイスで複数のカードブランドが扱え、用途によって利用するカードが選べる。

 対応デバイスとしては、モジュールがコンパクトかつ低コストで、ワイヤレス規格であるという点から、携帯電話やPDAなどのモバイル端末が中心に据えられているが、同社ではカシオと共同で、今年1月にラスベガスで行なわれた展示会「CES」において、IrFM対応の腕時計を利用したデモを披露していた。

 IrFMは、既存のクレジットカードやデビットカードなどと互換性を保って運用できるように考えられているのが特徴で、店舗や金融機関が従来の支払いシステムのインフラを変えることなく利用できることを保証しているという。また、店頭でクレジットカード現物の受け渡しがなくなることから、不正コピーの防止にもなる。なお、セキュリティと同等に実現へ向けてもっとも重要視されるポイントは、1〜3秒程度で素早く決済を完了させること。北角氏は、「自販機にコインを入れて、ジュースを受け取る以上に時間がかかってしまうようでは店頭では使えない」と操作簡素化の重要性を強調した。

同社はIrFMの標準化作業に技術サポートとして参加。IrFMは2002年を皮切りに実証試験が開始され、2003〜2004年の実用化が見込まれている
IrFMは、既存のクレジットカードやデビットカードなどと互換性を保って運用できるように考えられているのが特徴




■ IrFMを実現するソリューション「Beam to Pay」

 セミナーでは、実際にPOS連動機能を備えたIrFM対応のCAT端末と、デモ用のIrFM対応カード型モバイル端末を使ったデモも披露された。決済手順としては、バーコードリーダーで買上商品の情報を読み取り、POSアプリケーションで電子決済処理が行なわれる。カード情報は1、2秒で素早くCAT端末へ転送され、デモを一見した限りでは現行の決済工程とほとんど変わらず、既存の決済方式を継承していることがわかる。同社では、「店舗での導入および顧客の理解も得やすい」と自身のほどをアピールした。

 なお、このセミナーでは、同社のIrFMソリューション「Beam to Pay」の製品群も併せて発表された。Beam to Payの製品群としては、IrFMの開発ノウハウをサポートしたソフトウェア開発環境を提供するミドルウェア「DeepCore」シリーズと、IrFM/IrMC対応機能を1モジュールに搭載し、POS/CATと通信できる「Legasic Module」、および同対応機能を1チップLSIに搭載し、POS/CAT側から制御できる「Legasic Chip」などがあり、今回披露されたデモはこれらのソリューションを利用して行なわれた。

 「Legasic」シリーズの開発はすでに完了しており、同社では今夏よりモジュールとチップの廉価版をそれぞれ発売する予定。製品単価は数百円レベルになる見込みだという。

セミナーではIrFM対応のCAT端末とデモ用のIrFM対応カード型モバイル端末を使ったデモを披露
今回のデモで利用された、同社のIrFMソリューション「Beam to Pay」の製品群も併せて発表された




■ 韓国では今年4月からIrFMによる電子決済システムが商用化

韓国Harex InfoTech社 海外事業部のLee Kyu Sumg(リー キュ ソン)氏

 またセミナーでは、実際にIrFMの導入が開始されている海外の事例も紹介された。韓国・城南(ソン ナム)市では、今年4月からHarex InfoTech社、LG Telecom、国民カードが共同で提供する、携帯電話を使ったIrFMによる電子決済システムが世界で初めて商用化されている。

 サービス名称は「ZOOP(ズープ)」で、既存のクレジットカード・リーダーに赤外線アダプタを接続し、携帯電話を使って代金を支払う。カード情報は携帯電話内のメモリに記録され、決済履歴はZOOPのサーバー上に記録される。紛失した場合はカード会社に連絡すると、数分以内に決済の利用が停止されるという。

 同年3月から城南市の一部でテストサービスが開始され、4月末から城南市全域のATMや自販機などで、5月からは映画館、ケンタッキーフライドチキン、スターバックスなどの加盟店で利用可能となっているという。6月頃にはバスやタクシーなどの交通期間へも拡大され、ソウル市など韓国全土の主要都市でもサービスが開始される予定だという。

 なお、リンク・エボリューションは、ZOOPの決済システムを開発したHarex InfoTech社と協力関係にあり、技術提供を行なっているという。今回のセミナー会場には、Harex InfoTech社 海外事業部のLee Kyu Sumg(リー キュ ソン)氏が招かれ、ZOOPの商用サービス開始時に発表されたイメージ映像や、現地で報道されたニュース映像を紹介するとともに、現地の携帯電話を用いたデモも披露された。

 またLee氏は、ZOOPのメリットとして、「お金を扱わないため、自販機などからコインが盗まれるようなことはなくなり、また端末内のカード情報により、未成年者が酒や煙草を購入することも防げる」ことなどを挙げ、IrFMの利便性をアピールした。なお、Harex InfoTech社は今後、リンク・エボリューションと組んで日本市場にも進出していきたい意向だという。

画面は韓国で4月から商用サービスが開始された「ZOOP」のイメージ映像
韓国Harex InfoTech社のLee氏からは、現地の端末を使ったZOOPのデモが披露された


■ URL
・ リンク・エボリューション
http://www.linkevolution.co.jp/
・ 韓国HAREX InfoTech社(ハングル語)
http://www.mzoop.com/
・ IrDAのWebサイト(英文)
http://www.irda.org/


■ 関連記事
リンク・エボリューション、IrMC携帯対応のワンチップLSIを開発 [2002/04/23]


(松下 麻利)
2002/05/16 22:59


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