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Sage Plaisir J

2002/11/11版

[タブレットPC発売、ペン操作よりも、キーボードレスがポイント]

2002年11月7日、マイクロソフトは、Windows XP Tablet PC Edition の発売を開始し、メーカー各社からタブレットPC の発売も開始された。

タブレットPCは、以前から様々な形で発表されてきて失敗してきた ペン・コンピュータなのだが、マイクロソフトによれば、ペンに 関連するハードウェアの使い勝手が実用的になってきたこと、文字 認識などの技術が実用的になってきたことをブレイクの要因として、 今回のムーブメントを起こした。 2000年のCOMDEXで発表されてから 2年も経過してようやく商品化された。

タブレットPCは、電子ペーパーを意識した軽量のピュアタブレット型と、 ディスプレイ部をひねればノートPCにもなるコンバーチブル型に 分けられる。 ピュアタブレット型は、USBキーボードをつければ キーボード入力もできるが、ノートPCのようにディスプレイを立てる には一苦労するだろう。 そのため、ピュアタブレット型を提供して いるメーカーは、タブレットPCを立てられるような、ドッキング ステーションを用意している。 ただ、ホームセンターに売っているゴム シールを本体下部に付ければ十分かもしれない。 赤外線で作り出す バーチャルキーボードを付けることを検討しているメーカーもある。 タブレットPCが外付けハードディスクになるという使い方をするために、 ネットワークにつなぐのなら、特に何も用意する必要は無いだろう。

Windows 側では、アプリケーションを最大化表示したときにも 隠れない手書き認識ツールの他に、画面の縦横を変えられることや、 ペンのジェスチャによる操作、ページスクロールなどのハードウェア ボタンの割り当てなど、機能追加を行っている。 従来の Windows アプリケーションは、キーボード入力が、手書き 認識からの入力に代わるだけなので、ほとんどのアプリケーション が動作可能だ。 あえて、不具合を挙げるすれば、特定のキーボード 操作によるランチャーソフトなどは使えなくなるものも出てくる かもしれない。 Alt+F+S で常に保存をしながら編集しているのが 癖になっている人には、編集してきた内容を失ってしまう危険もある。 わざわざ保存ボタンを押しにいくのが面倒だからだ。 しかし、編集をメインとしているときは、キーボードをつなげれば 問題ない。 むしろ、普段はネットサーフィンやメールの返事に 使うことが多いのでペン入力で十分だ。 しかし、ハードウェア・ ボタンのデキによって利便性に大きく差が出るだろう。 ホーム ポジション(本体の端)にカーソルキー、ページスクロールキー、 リターンキー、エスケープキーに相当するキーが並んでいて、 ペンを使わないで済むようになれば、便利になるだろう。

ウィンドウがいろいろ開いている状態で、どこでもペン記入が できるモードや、画面の一部を切り取ってメモに貼り付けることが できる機能、付箋紙アプリやソフトキーボードも標準で付いてくる。 Windows XP は、スタンバイからの起動時間が劇的に早くなって いるため、気づいたらすぐにメモすることも可能だ。 しかし、 それでも5秒待たされるのは大きいかもしれない。 マイクロソフト・オフィスに、ペン入力による自由図形の入力ができる ようになる、アドオンパックの無償提供も開始した。 あの使いにくい 図形ツールから脱却できる点はいいが、清書するには使えないだろう。

ペン入力による自由図形の入力など、電子インクと呼ばれる機能を プログラミングできるようにする SDK はすでに無料配布している。 Visual Studio 6 SP5 か、Visual Studio .NET が必要となる。 毎度のことだが、英語のマニュアルを読まなければならない。 ハードウェアボタン、音声入力、省電力などもある。 詳しくは、 インストールして見ることができるヘルプを参照してほしい。

実際にタブレットPCを触ってみると、やはり Mobile Pentium では Windows XP は重たい。 クラシックモードにしないとつらいだろう。 文字認識エリア内や図形入力は十分な速さだった。漢字の認識率は 高かったが、英語の認識率は悪かった。 英語の小文字の c を一発 で入力するのは不可能で、候補から選択しないとできなかった。 書き直しをするのも、わざわざ書き直しボタンまでペンを移動させ ないといけない。

デフォルトの設定では、手書き入力ウィンドウの上に非常に邪魔な テキスト領域があったりして非常に使いにくくなっているのだが、 設定を変更すれば快適になりそうだ。 たとえば文字入力は、 Palm のグラフィティに似たブロック入力モードに設定すれば、 快適になった。 右から左へ水平線を書くとBack Space(Undo)に なることが、いかに便利であるかを改めて知った。 B,Q,T,X などは Palm と書き方が異なるが、すぐに慣れるだろう。 デフォルトをそれにしていないのは、マイクロソフトのプライド なのだろうか。 ブロック文字入力用の Palm パッドと、 文字認識エリアを並べて、英語用と日本語用と表示すれば、 思い通りに入力できてベストなのだが、それは英語入力モード にしか存在しないようだ。(このとき、Palmパッドと筆記体認識 エリアが並列する)

Table PC 付属の Windows Jurnal がさっとメモできて便利だ と宣伝しているが、文字入力モードにしないと文字入力はでき ない。 紙に書くような感覚の宣伝文句の正体は、一旦図形で 書いておき、後でテキストに清書するという使い方のようだ。 これでは、Palm の同様のツールと変わらない。 OCRの機能が 付いているのだろうか?

(→続き)