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週刊 IT ニュース&コラム 2002/04/29
最高裁で中古ゲームソフトの販売を認める

2002年 4月25日、最高裁判所は、ゲームメーカーの著作権により 中古ゲームソフトの販売による利益をメーカーが受けることが できるかどうかの裁判で、その上告を棄却した。

判決理由は次のとおりであると、筆者は解釈した。(原文はリンクを参照)

中古ゲーム販売店側の ARTS、上昇、ライズ、アクトは、販売価格に 対する販売店側の利益率が、他の商品に比べて少ないことに言及した。

メーカー側の ACCS は、デジタル・ネットワーク時代の法律に なっていないと主張した。モノの中古品と異なり、デジタルデータは 劣化がしないため、新品同様であるためだ。また、ゲームは公衆に 提示するものではないという判決理由にも疑問を投げかけた。

おおざっぱに言えば、頒布権は映画やDVDと異なるが、本や CDと同じと 判断したことになる。 最近になって、メーカー側は、コピーガード 付き CDが発売されたように、強制的な手段が使われるようになってきた。 ゲームは、現在でもコピーガードがある程度施されているが、 今後はネットワークゲームの普及により、ログインによる強制的な 制限をつけるようになるだろう。

たくさんゲームをしたい購買者の立場になれば、この判決は喜ばしい ことであるし、メーカー側の立場になれば、この判決は不服と感じる だろう。よって、判決によってどちらに利益をもたらすか決めるだけ のものなのかもしれない。

しかし、多くのコンテンツが製作される中で、ユーザが楽しめるものが 少ない世界になってしまってはさみしい。ユーザがコンテンツに対する 価値を選択できるように、すぐにでも高い値段を出すか、半年後でも いいから少ない値段を出すか、選択できる自由を与えた方がいいだろう。

今回の判決は、一見、その選択の権利をユーザが得たように思えるかも しれないが、中古やレンタルが、新品と同じもので、同じ日に取得 できるのであれば、コンテンツの価値にかかわらず安いほうを購入するに 決まっている。そこには価値に対する選択は行われていない。

そして、発売日にユーザが価値を見出せなかったものが、後になって 価値を見出せるように、次のことだけを考えているメーカーに、 「永久的に」頒布権が与えられないようにしたほうがいいだろう。 ただ、価値を見出したとき、著作権による利益はメーカーや販売店が 受けられるようにするべきだろう。

メーカー、販売店、ユーザのすべてが納得でき、良質なコンテンツが 豊富に世の中に広がるような、新しいビジネスモデルが求められている。

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週刊 IT ニュース&コラム 2002/04/22
Google の機能がプログラムに組み込める! Google API を公開

インターネット検索の定番である Google の検索機能が、プログラムから 利用できるようになる API(アプリケーション・プログラミング・ インターフェイス)のベータ版を公開した。

Google は、いわずと知れた検索サイトであるが、Windows の API の 関数名を直接入力して機能を調べることができるほど優れた能力を 持っている。プログラミング・ツールについている高度なヘルプの 検索機能よりも的確な情報を得ることができる。

API の公開で、Webプログラマは、この高度な能力を自由に操ることが できるようになる。 ただ、Google エンジンを自由に使えるという わけではないため、自分が用意したデータに対して検索をかける ことはできない。つまり、Google API で得られるデータは、あくまで インターネットに公開されたホームページの情報だけだ。 よく工夫して 考えないと、ちょっと便利な気がする Google 検索プログラムになって しまうだろう。

Google API が無くても、今でもある程度 Google の機能を使うことができる。 自分のホームページに対して検索する検索機能をホームページに付けるには、 FORM タグを使って HTML を記述すればいい。(詳しくは、私のホームページの ソースを参照。) 特定のキーワードを検索するには、ブラウザを起動する Windows API を使って URL を記述するだけでよい。(URL の記述方法は、 Google で検索した後の URL を見ればよい。)

Google API によって、どのような新しいアプリケーションができるかは、 全くわからない。 全く思いつかない。 それは、機能からアプリケーションを 設計するということが、間違っているからなのだろう。 プログラミングは、 まずニーズがあって、その実現のために、必要となる機能を探して使うこと だからだ。 いつか、Google の検索機能が必要となる日が来るかもしれない。 そのときまで、Google API があることを覚えておけばいい。

なお、Google API を使うには、Java か Visual Studio .NET が必要となる。 商用利用も許可していない。

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週刊 IT ニュース&コラム 2002/04/15
昭文社、SVGによる地図をリアルタイムに配信するサービスを発表

昭文社とシビルソリューションズは、SVG と呼ばれるベクター形式の地図に、 企業特有のデータを付け加えた形で、企業ユーザにリアルタイムに配信する サービスを、2002年 6月より開始すると発表した。

地図は、昭文社の地図データをベースにし、SVG形式で配信される。 SVG形式のデータは、Adobe社などが無料で提供している SVG ビューアを ブラウザにプラグインすることで見ることができる。このサービスは、 Java ベースのリクエスト・プログラムと協調して利用する。

実際、どのような感じの地図になるかは、シビルソリューションズのホーム ページで体験していただきたい。(登録が必要)。 私が操作した感じでは、 現在インターネットで配信されている地図サービスと同等のものであるが、 フリーモードにすると、SVG ビューアの拡大縮小機能を使うので、サーバに アクセスすることなく素早く操作することができ、快適だ。

ただ、拡大したところで、情報が詳細になるわけではないので、広域の地図 からフリーモードにして素早く詳細な地図を見ることはできないのが惜しい ところだ。逆に、あらかじめ詳細な地図データをダウンロードしておくことも 考えられるが、そうすると地図が見にくくなってしまう。 Adobe社の SVG のデモページにある地図を見てもわかるが、詳細な地図を無理やり縮小すると、 線がぎっしりして、見にくくなってしまう。

地理情報システム(GIS)の地図の部分のデータを一社が管理することで、 GIS の開発や保守のコストの軽減をすることも宣伝されているが、これは、 他社の GISソリューションとあまり差が無いようだ。住所や電話番号による 地域検索ができたり、インターネットで配信することは、確かに先端を 行っているが、特に珍しいものではない。

SVGにより、高度なアニメーション、ハイパーリンク、データベースの連携が 簡単にできるようになるメリットは確かに大きいが、実際に開発コストが軽減 するかどうかは、ソリューションを提供する開発パートナーの実力による ところが大きいだろう。

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週刊 IT ニュース&コラム 2002/04/08
C# のソースコード公開、普及の後押しとなるかは今後のサポート次第

2002年 3月25日、マイクロソフトは .NET のキーとなるバーチャル・マシン などを含んだ CLI(Common Language Infrastructure)と、新プログラミング 言語 C# コンパイラの、ベータ・バージョンのソースコードを公開した。

特に登録の必要もなく、誰でもすぐにダウンロードできる。ダウンロード サイズは、10.9MB。tar/gz 形式で圧縮されている。ソースは100万行にもおよぶ。 ソースは、マイクロソフト独自の「Shared Source ライセンス」に基づいて 扱うことができる。改良したバージョンを配布することはできない。 学術研究や、デバッグのために使用することができる。

ソースコードのコンパイルは、WindowsXP と FreeBSD4.5 で行うことができる。 Windows では Visual Studio .net と、Active Perl 5.6.1.630 が必要となり、 FreeBSD では、Perl 4.5 が必要となる。 ビルドの方法の詳細については、 ルートディレクトリにある、readfirst.htm に書かれている。 ドキュメントは、Have Fun! など書かれており、開発者に親しみやすいように 書かれている。

ソースが公開されたことで、デバッグの役に立つかもしれない。しかし、 公開されたものは、ベータバージョンなので、リリースバージョンでは 異なる実装がされている可能性がある。このことが、デバッグの弊害に なる可能性もある。その補足は、マイクロソフトが用意した、ニュース グループ(掲示板)で対応して頂けることを期待するしかない。

ソースが公開されたことで、バグのある点を的確に指摘することができる ようになった。しかし、逆に、ソースを確認していないと、マイクロソフト へのクレームを対応してくれない可能性もある。100万行あるソースから バグの原因であろう箇所を特定することはかなり時間がかかるか不可能と いっていいだろう。結局これまでのように、ユーザ同士の情報交換によって 問題点を解決しなければならないのだろうか。

これは、マイクロソフトにとってチャンスである。ニュースグループに デキル技術者を担当させて、活性化させれば、マイクロソフトへの悪い印象も 大きく変わるだろう。特に FreeBSD 版に力を入れれば、.NET が本気で マルチプラットフォームにしようとしている印象も与え、安心して マイクロソフト製品を使うようになるだろう。

Linux と異なり、改良したバージョンを配布することは許されていない。 もしバグの対処方法がわかっていても、ユーザのプログラムの配布と一緒に 改良した CLI の一部を配布することができないのは問題だ。ただ、これも マイクロソフトが、オンライン・アップデートで安全かつ迅速に対応する 態度をとれば済むことだ。それがうまくできれば、Linux のように、異なる バージョンによる細かな動作の違いに対応するコストがかかることもないだろう。

ただ、このようなチャンスをマイクロソフトは度々逃してきている。

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週刊 IT ニュース&コラム 2002/04/01
驚異的な三次元地図を実現する MAP CUBE 発売

2002年 3月25日、インクリメントP、キャドセンター、パスコの3社が 共同で開発した三次元デジタル地図「MAP CUBE」(マップキューブ)の 販売を開始した。

MAP FAN やカーナビソフトで有名なインクリメントP、都市計画などの ハイテクCGを提供しているキャドセンター、航測技術による高さデータ を提供するパスコが共同することで、驚異的な三次元地図を実現する材料が 整った。その品質は、下記の関連リンクからたどって見てもらいたい。

ゲームの三次元グラフィックスは、プレイヤー感動を与えるほどの品質を 持つほどになったが、カーナビや、インターネットの地図サービスによる 地図は、非常に貧祖なものであった。 地図を表示する元データの形式は、 現在3種類ある。1つは、ベクトルデータといって、経度緯度を X座標Y座標とした数値で、道路の位置などを表現するもの。 この場合、単純な直線の情報しかないので、見た目も単純なものになる。 この欠点を克服することを狙ったもう1つのデータ形式は、 地図の画像(ビットマップ)をそのままデータとして持っているもの。 見た目は良いのだが、拡大縮小すると画像が荒くなるという欠点を持つ。

そして、最近よく発売されているのが、三次元の地図ソフトで、建物の 形状情報を三次元でデータ化したものを三次元グラフィックスで表示している。 しかし、三次元データには詳細なものがないため、ハード的には高度な 表現力を持ちながら、それを発揮できなかった。 MAP CUBE は、 都市計画をイメージするときに使われる CG 技術と、航測技術による 詳細な高さデータによって、実際の街の様子とほとんど変わらない 表現を実現した。

これは、グラフィックス技術だけでは、エンドユーザに高度な表現が 提供できないことを端的に表している。

MAP CUBE は、地図ソフトを販売する形態ではない。地図データや テクスチャを購入するか、1シーンを購入する形態になる。 そのため、エンドユーザがすぐに MAP CUBE を扱えるようにはならない。 そのうち、ある施設への道案内として、施設周辺の三次元地図を インターネットからダウンロードする形が主流になるだろう。 カーナビに搭載されるには、DVD では収まりきらないだろうから、 多少場所をとる DVD チェンジャーを使うか、ブロードバンド化された 無線ネットワークが整備されなければならないだろう。 無料のインターネットの地図サービスになることは、ビジネス的に 考えにくい。配管や配線などのビジネスの分野で使われるだろうが、 必要性を考えると、あまり販売できないかもしれない。 リーズナブルでもタタキ売りしないような価格設定やビジネスモデルが 重要になるだろう。

地図を利用したアプリケーションは GIS と呼ばれており、多くの 応用例が考えられているが、その API を標準化することが重要だろう。 単に、位置情報の受け渡しして、地図を表示するだけでなく、経路情報や 範囲情報の受け渡しを行って、拡大縮小が自在にできたり、地図の上に 建設予定物やランドマークなどの三次元オブジェクトを表示する方法まで、 深く API 化することが重要だ。 地図データをインターネットから ダウンロードしつつ、ローカルマシンに入ったアプリケーションデータを 表示する方法が主流になると考えられる。 これは、ウィンドウに変わる新しいユーザ・インターフェイスと言って いいだろう。

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